生活援助従事者研修とは、介護の人材確保の裾野を広げることを目的とし、訪問介護の生活援助を中心としたサービスの担い手を育成するための研修です。カリキュラム内容は介護職員初任者研修と同科目ですが、時間数は59時間(初任者研修の130時間の約半分)と初任者研修の約半分と決められています。
ちなみに、以前より話が出ている『入門研修』とは異なります。また、市区町村で実施されている『生活支援サービス従事者研修』とも違います。
研修をどこで実施されるか、受講費用などについてはまだ決まっていません。詳細が分かり次第、当ページでも紹介していく予定です。
現在公表されている範囲内でまとめてみましたので、参考にしてみてください。
生活援助従事者研修のカリキュラムは、既に厚生労働省より公表されています。初任者研修と同科目で構成されていますが、時間数が初任者研修(130時間)の約半分である59時間で組まれています。(別途修了評価として筆記試験あり)
以下で、各科目別に『初任者研修』『生活援助従事者研修』の時間数をそれぞれ一覧でまとめてみました。
▽【学習項目別】初任者研修と生活援助従事者研修の時間数比較
『介護保険最新情報 Vol.636』より抜粋
学習項目 | 初任者研修 時間数 |
生活援助従事者研修 時間数 |
---|---|---|
職務の理解 | 6 | 2 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 9 | 6 |
介護の基本 | 6 | 4 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 9 | 3 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6 | 6 |
老化と認知症の理解 | 12 | 9 |
障害の理解 | 3 | 3 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 | 75 | 24 |
振り返り | 4 | 2 |
合計 | 130 | 59 |
どの項目についても、生活援助従事者研修の方が学習時間数が短いことが分かります。なかでも『こころとからだのしくみと生活支援技術』については51時間もの差があり、学習内容の違いで大きく影響しているといえますね。
尚、生活援助従事者研修カリキュラムで、以下の注意事項があります。
1) 講義と演習を一体的に実施すること
2) 『生活援助従事者研修における目標、指標の指針』を踏まえて実施すること
3) 『こころとからだのしくみと生活支援技術』においては、
移動・移乗に関連した演習を2時間以上実施すること
4) 『職務の理解』及び『振り返り』においては施設の見学等の実習を活用することができる。この場合、各科目のすべて又は一部の項目のみ実習に充てることができる。その他、効果的な研修を行うため必要があると考えられる場合には、他の科目についても施設の見学等の実習を活用することができる。
5) 上記カリキュラムとは別に、筆記による修了評価(0.5時間程度)を実施すること。
6) 各科目内の時間配分については、内容に偏りがないように、十分留意すること。
※沖縄県HP『
生活援助従事者研修 カリキュラム』より抜粋
各科目別に、学習するうえでの到達目標・修了時の評価ポイントが設けられています。どのようなことを学ぶのか、身につけられるのか参考にしてみてください。
▽科目・項目と到達目標
学習科目・項目 | 到達目標 |
---|---|
職務の理解 ・多様なサービスの理解 ・介護職の仕事内容や働く現場の理解 |
研修に先立ち、これからの介護が目指すべき、その人の生活を支える生活援助中心型のケアの実践について、介護職がどのような環境で、どのような形で、どのような仕事を行うのか、具体的イメージを持って実感し、以降の研修に実践的に取り組めるようになる。 |
介護における尊厳の保持・自立支援 ・人権と尊厳を支える介護 ・自立に向けた介護 |
介護職が、利用者の尊厳のある暮らしを支える専門職であることを自覚し、自立支援、介護予防という介護・福祉サービスを提供するにあたっての基本的視点及びやってはいけない行動例を理解している。 |
介護の基本 ・介護職の役割、専門性と多職種との連携 ・介護職の職業倫理 ・介護における安全の確保とリスクマネジメント ・介護職の安全 |
・介護職に求められる専門性と職業倫理の必要性に気づき、職務におけるリスクとその対応策のうち重要なものを理解している。 ・介護を必要としている人の個別性を理解し、その人の生活を支えるという視点から支援を捉える事ができる。 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 ・介護保険制度 ・医療との連携とリハビリテーション ・障害福祉制度およびその他の制度 |
介護保険制度や障害福祉制度を担う一員として最低限知っておくべき制度の目的、サービス利用の流れ等について、その概要のポイントを列挙できる。 |
介護におけるコミュニケーション技術 ・介護におけるコミュニケーション ・介護におけるチームのコミュニケーション |
高齢者や障害者のコミュニケーション能力は一人ひとり異なることと、その違いを認識してコミュニケーションを取ることが専門職に求められていることを認識し、生活援助中心型サービスの職務に従事する者として最低限の取るべき(取るべきでない)行動例を理解している。 |
老化と認知症の理解 ・老化に伴うこころとからだの変化と日常 ・高齢者と健康 ・認知症を取り巻く状況 ・医学的側面から見た認知症の基礎と健康管理 ・認知症に伴うこころとからだの変化と日常生活 ・家族への支援 |
・加齢・老化に伴う心身の変化や疾病について、生理的な側面から理解することの重要性に気づき、自らが継続的に学習すべき事項を理解している。 ・介護において認知症を理解することの必要性に気づき、認知症ケアの基本を理解している。 |
障害の理解 ・障害の基礎的理解 ・障害の医学的側面、生活障害、心理・行動の特徴、かかわり支援等の基礎的知識 ・家族の心理、かかわり支援の理解 |
障害の概念とICF、障害福祉の基本的な考え方について理解し、介護における基本的な考え方について理解している。 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 ・介護の基本的な考え方 ・介護に関するこころのしくみの基礎的知識 ・介護に関するからだのしくみの基礎的知識 ・生活と家事 ・快適な居住環境整備と介護 ・移動・移乗に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護 ・食事に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護 ・睡眠に関連したこころとからだのしくみと自立に向けた介護 ・死にゆく人に関連したこころとからだのしくみと終末期介護 ・介護課程の基礎的理解 |
・介護技術の根拠となる人体の構造や機能に関する基礎的知識を習得し、生活援助中心型サービスの安全な提供方法等を理解し、基礎的な一部または全介助等の介護が実施できる。 ・尊厳を保持し、その人の自立及び自律を尊重し、持てる力を発揮してもらいながらその人の在宅・地域等での生活を支える介護技術や知識を習得する。 |
振り返り ・振り返り ・就業への備えと研修修了後における継続的な研修 |
・研修全体を振り返り、本研修を通じて学んだことについて再確認を行うとともに、就業後も継続して学習・研鑽する姿勢の形成、学習課題の認識をはかる。 |
受講者の負担軽減、受講を容易にする対策として、生活援助従事者研修カリキュラムで実施する全59時間のうち、29時間の範囲内で通信学習で学ぶことができます。以下に項目別で一覧にまとめてみました。
▽【学習項目別】生活援助従事者研修の通常・通信学習の時間数比較
『介護保険最新情報 Vol.636』より抜粋
学習項目 | 生活援助従事者研修 時間数 |
通信形式で実施できる上限時間 |
---|---|---|
職務の理解 | 2 | 0 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 6 | 3 |
介護の基本 | 4 | 2.5 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 3 | 2 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6 | 3 |
老化と認知症の理解 | 9 | 5 |
障害の理解 | 3 | 1 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 | 24 | 12.5 |
振り返り | 2 | 0 |
合計 | 59 | 29 |
※別途、筆記試験による修了評価あり。
尚、生活援助従事者研修で使用されるテキストは、日本医療企画より発刊されています。
●「生活援助従事者研修」テキスト はじめて学ぶ 生活援助
監修:黒澤貞夫
(一般社団法人介護福祉指導教育推進機構代表理事)
定価:3,240円(税込)
生活援助だけではなく、身体介助もできたほうが介護業務を行う際に給与アップも期待できます。そんな時でも生活援助従事者研修の受講が無駄になることはありません。介護職員初任者研修を受ける場合に、通常であれば130時間のカリキュラムをこなさなければなりませんが、生活援助初任者研修を持っていれば重複するカリキュラム内容を省略することができるのです。実際には、足りない71時間の研修過程を修了すれば良い、ということになります。
介護には興味はあるが自分に向いているか不安、そんな方は生活援助従事者研修を修了し実務を積んで介護職員初任者研修を受講する、といった段階的に進めていくこともおすすめします。
初任者研修全般について詳しく知りたい方はこちらのページをご覧下さい。無料で資料請求もできます。
生活援助従事者研修が実施される中で、研修の実施先や介護事業所側の目線で考えた場合に課題や疑問に感じてしまいます。その例を紹介したいと思います。
カリキュラム内容については公表されていますが、生活援助従事者研修の指定事業者はごく少数に限られています。そのため、今すぐ研修を受けたくても受講しづらさはあるでしょう。研修先が増えない要因として、受講費用の妥当性や開講場所をどうするのかなど、決めかねている事業者も多いのではないかと考えられます。
新年度の介護報酬改定で基本報酬を2単位引き下げるとの判断が下されたようです。生活援助を担うヘルパーの報酬も微減となるため、介護事業所側も雇用しづらい状況になると考えられます。生活援助従事者研修を修了したからと言って、それだけで仕事に就くことは難しいのではないかと考えています。
生活援助従事者研修については、研修の実施先がどうなるのかも不透明な状況です。これから介護の資格を取得しながらお仕事をしたいと考えている方は、初任者研修から受講されるのが得策かもしれませんね。
尚、生活援助従事者研修について明らかになった情報は、随時掲載していく予定です。
初任者研修全般について詳しく知りたい方はこちらのページをご覧下さい。無料で資料請求もできます。
初任者研修についてもっと詳しく知りたい方のために、目的別に記事を紹介します。
目的 | 関連記事 |
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静岡県西伊豆生まれ。
●合同会社福祉クリエーションジャパン 代表
●介護施設 現場支援コンサルタント
●一般社団法人 日本アクティブコミュニティ協会 公認講師
●介護情報誌「TOWN介護Tokyo」 編集長
●NPO 16歳の仕事塾 社会人講師
●株式会社 是眞 編集長
【保有資格】
●介護福祉士
●ホームヘルパー1級・2級
●レクリエーション介護士1級・2級
●社会福祉主事任用資格
●福祉用具専門相談員
●介護予防運動指導員
●音楽健康福祉士
●音楽レクリエーション指導士3級
●防火管理者
●大型自動車1種免許
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